【日本株】グロース市場改革の流れを読む 投資妙味のある銘柄は? | 市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

日経平均は一気に上放れてきました。そのタイミングはまだ先と見ていましたが、市場の雰囲気は早くも一変したと言ってよいでしょう。きっかけは中東での電光石火の停戦成立でした。戦火拡大回避という見方の浸透に加え、関税に関しても「現実的かつ融和的」な落としどころへとの観測が広がり、投資安心感に繋がったのだと考えます。

国内景気に関してはまだまだ不透明感が付き纏うものの、まずは当初に懸念された「最悪シナリオ」(本当に最悪かどうかの疑問は残りますが)回避が好感されたと見てよいでしょう。今後もこうした揺り戻しはまだ続くと見ますが、関税の影響や日本の物価高が景気に与える影響はどこかで発現してくることは認識しておくべきと位置付けます。音楽が鳴っているうちはダンスを楽しむべきですが、宴の終わりは後始末が待っていることもまた真実なのですから。

東証グロース市場指数は9週連続の陽線を記録

さて、今回は「グロース市場」をテーマに取り上げてみましょう。既にお気づきの方も多いと思いますが、ここもとグロース市場の株価上昇が顕著です。東証グロース市場指数は4月上旬の「トランプ関税ショック」を大底に週足ベースで9週連続の陽線を記録し、この間の上昇率は実に40%を超えています。なお、この間の東証プライム株価指数は25%程度の上昇です。

これまで長くグロース市場の株価指数はプライム市場のそれを下回るパフォーマンスにあったのですが、ようやくグロースの名前通り、成長が評価される市場となってきたと言えるのかもしれません。かつてこのコラムでこの現象を「株式市場は(グロース市場で期待される)成長より(東証改革によってプライム市場で期待される)改革に注目している」と指摘しましたが、ここにきて本来あるべき「改革よりも成長へ」と焦点が移る変化が始まったと言えるのかもしれません。

グロース市場が回復した2つの理由

しかし、事態はそう簡単ではないと受け止めています。こうしたグロース市場回復の背景には2つの理由があると考えます。

一つは一連のトランプ関税です。米国向けのビジネスが相対的に大きいプライム上場企業には関税問題で先行き不透明感がつきまとう一方、グロース上場企業は国内市場向けのウエイトが高い印象にあることで消去法的に選好されているのではないか、との見方です。

もう一つはグロース市場にも波及する見通しとなってきた東証改革です。これは従来「上場後10年で時価総額40億円以上」としていたグロース市場上場維持基準を「上場後5年で時価総額100億円以上」に修正するというものです。まだ案の段階ですが、増配や自社株買いの増加など企業サイドの劇的な意識変革に繋がったプライム市場改革と同様の連想が株式市場に広がったのではないかと想像します。

仮にこれらの見方が正しければ、前段で指摘した「改革よりも成長へ」の焦点シフトはまだ然程でもなく、実態はやはり(成長期待ではなく)改革期待が株価を牽引している可能性は大きいと言えるでしょう。実際、日経平均が動意づいた直近においては、グロース市場指数の週足は10週ぶりの陰線となり、そのパフォーマンスもプライム株価指数に競り負けています。これらも成長期待はまだ本命となっていないことを示唆しているように思います。

東証のグロース市場改革の余波

このグロース市場の改革は、元々は成長銘柄の市場といった建て付けであるにも関わらず、実際は時価総額50億円以下の小粒企業がグロース上場企業およそ600社の約40%を占めている状況に東証が業を煮やしたものと言えるかもしれません(一方、時価総額100億円超のグロース上場企業比率は約3分の1を占めており、二極化は鮮明です)。

これら小粒企業の中には、経営陣に上場の意味や責任に対する理解が著しく欠けていたり、しっかり練りこんだ形跡すら見られない安易かつ浅薄な成長シナリオで良しとしている「上場ゴール」のケースも少なくありません。グロース市場に対する東証の改革案はそのような状況の是正を図る意図もあるのでしょう。しかもその余波は非常に大きく、基準達成に疑問符がつく上場予備群企業は早くもなかなか上場準備に入れないという事態も発生し始めました。

しかし、起業家や投資家の立場からすれば、これは会社の成長機会の喪失であり、投資対象の選択肢縮小以外の何ものでもありません。次世代を牽引する若い企業の育成機会を摘みかねないとなると、資本市場の本義とは矛盾してしまう懸念もあります。返す返す、東証が改革に乗りださざるを得なくなったこのような「上場ゴール」企業を安易に許容してきた証券会社の罪は極めて重いと言わざるを得ないでしょう。

東証改革で企業はどう動く?グロース銘柄をスクリーニング

とはいえ、基準をクリアできずに上場廃止となってしまえば元も子もありません。今後多くのグロース上場企業は時価総額100億円確保に向けて積極的に動き出す可能性があると予想します。成長投資を怠って多額のキャッシュを積み上げている企業は配当に踏み切り、(する方もされる方も)M&Aが経営陣の背中を押す局面は増加するにしたがい、グロース銘柄でもそれら企業への投資妙味が増してくることでしょう。

そこで、基準達成を最も意識するであろう時価総額75~90億円の企業群を母集団とし、そこから直近2期連続営業黒字かつ営業黒字見通し、さらに営業利益以上のネットキャッシュ保有銘柄をスクリーニングすると、ジェイグループホールディングス(3063)、AIAIグループ(6557)、レントラックス(6045)、農業総合研究所(3541)、GMO TECH(6026)、マテリアルグループ(156A)、ダイブ(151A)、ラキール(4074)、CRI・ミドルウェア(3698)、Zenken(7371)、メタリアル(6182)といった企業を挙げることができます。

また同様の母集団において被買収魅力度の高いEV/EBITDA倍率が5倍以下の銘柄を探すと、博展(2173)、トレンダーズ(6069)、ニフティライフスタイル(4262)などがリストアップできます。これら企業群の今後の打ち手には要注目と言えるのではないでしょうか。

このようなスクリーニングは万能の銘柄選択装置ではありませんが(当然、条件を変えれば別の銘柄を探し出すことも可能です)、銘柄のふるい分けツールとしては実に有効です。このような視点でグロース市場改革の流れに乗った投資もまたぜひ、考えてみてください。

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