This page may contain third-party content, which is provided for information purposes only (not representations/warranties) and should not be considered as an endorsement of its views by Gate, nor as financial or professional advice. See Disclaimer for details.
短期筋の売り一巡もなお調整局面 | ゴールドマーケット解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
先週(6月23日週)の動き:NY金は週末にかけ上げ幅削る展開、JPX金は週初に過去最高値更新やはり上げ幅削り終了
先週(6月23日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、週前半は中東情勢を巡る地政学的要因を手掛かりに、週後半はトランプ関税を巡る各国との交渉を手掛かりに、上下に大きく振れることになった。日替わりメニューのようにくるくる変わる売り買い双方向の材料に、1週間のレンジの値幅は約150ドルに拡大した。
米軍イラン攻撃も短期間で緊張は緩和
週初6月23日は、前週末ににわかに発生した米軍によるイランの主要核関連施設3ヶ所に対する空爆で、地政学リスクを背景とする買いに3,400ドル超まで上昇。攻撃完了後、トランプ米大統領は国民向け演説でウラン濃縮施設を「完全に破壊した」と述べ、軍事行動の目的を達成したとしていた。
事態の展開は早く、イラン側の報復攻撃が懸念されたが、カタールにある米軍基地を攻撃したものの、内容は形式的なものだった。イラン側は戦争行為の拡大を望んでいないとの判断から、中東地域を広く巻き込んだ戦争に対する懸念は後退。その後実際にイスラエルとイランは停戦で合意した。それとともに、NY金は水準を3,300ドル方向に切り下げるとともに、市場の関心は米中を中心に各国・地域との関税交渉問題に向けられることになった。
米中関税交渉一区切り 迫る7月9日の期限
その関税交渉だが、6月27日には米中両国がレアアース(希土類)の対米輸出迅速化で合意したと伝わり、投資家のリスク選好姿勢が強まった。米国株はAI関連銘柄を中心に上昇し、S&P500種株価指数とナスダック総合指数は終値ベースで史上最高値を更新した。先行して中東地政学リスクの後退から、いったんはNY金に投じられていた逃避資金の流出に加え、リスクオンセンチメントの高まりの中でNY金は週末にかけて水準を切り下げることになった。
関税交渉の猶予期限とされる7月9日が近づく中、6月27日にベッセント米財務長官は各国・地域との交渉について、9月1日のレーバーデーまでに合意できるとの見通しを示したことも、関税交渉への警戒感を後退させた。
先週末6月27日のNY金は、約1ヶ月ぶりの安値水準となる3,287.60で終了した。週足は前週末比98.10ドル2.9%安で2週続落となった。レンジは3,266.50~3,413.80ドルと147.30ドルに拡大した。
JPX金は週初に引値、取引時間中ともに最高値更新
国内金価格もNY金同様に週初に高騰し、週末にかけ上げ幅失う展開となった。週初に中東地域での戦争拡大観測から為替市場で米ドルが買われ、6月23日に米ドル/円相場が一時148.01円まで円安が進み、そのタイミングが、NY金の高値と重なった。大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、6月23日1万5985円で取引を終了。終値ベースでの過去最高値を更新した。同日の夜間取引では一時1万6171円まで買われ取引時間中の高値を更新した。その後は、地政学リスクの後退とともに米ドルが主要通貨に対し売られ、米ドル/円相場も一時144円割れまで円高方向に進んだこともあり水準を切り下げた。
6月27日のJPX金の終値は1万5398円のほぼ安値引け状態となった。週足は前週末比331円2.1%安の2週続落となった。レンジは1万5397~1万6171円で値幅は774円と6週間ぶりの大きさとなった。
中央銀行の金準備は増加見通し(WGC調査)
国際的な金の広報調査機関ワールドゴールドカウンシル(WGC、本部ロンドン)が、今回で8回目となる「中央銀行金準備調査」の結果を6月20日に発表した。
欧州中央銀行(ECB)が6月11日に発表したリポートにて、2024年末の各国中央銀行の保有する外貨準備の中で金(ゴールド)の比率が20%とユーロ(16%)を抜いて2位になったことを6月16日付の当コラムで取り上げた。今回のWGCの中銀調査もその内容と整合性のあるものだった。
2025年の調査は2月25日から5月20日に実施され、73ヶ国の中央銀行から回答が寄せられている。注目事項を抜粋すると以下のようになる(回答比率の多い順)。
※外貨準備管理上の注目点
①全体の金利水準(93%)、②インフレ対応(81%)、③地政学リスク(77%)、④貿易・関税問題への対応(59%)、⑤予期せぬショックへの対応(49%) ※外貨準備に金を組み込む背景(複数回答)
危機時のパフォーマンス、長期的な価値の保全、インフレ対応、効果的なポートフォリオの構築、地政学リスクへの対応、デフォルトリスクのない点、これまでの通貨性など歴史的な背景 ※5年後の保有比率の見通し(全体の回答比率)
米ドルの保有比率は減少する 73% (2024年62%、2023年55%)
金(ゴールド) 保有比率は減少する76%(2024年69%、2023年62%)以上から、新興国を中心に金(ゴールド)に対し引き続きポジティブなスタンスで臨んでいることがわかる。
今週(6月30日週)の見通し:関税暫定期限、大型減税法案の行方、6月雇用統計に注目 NY金3,300ドル±50ドル、JPX金1万5400円±300円
重要経済指標の発表続くイベント週
今週(6月30日週)は米国の重要経済指標の発表が重なるイベント週となる。注目の6月雇用統計は7月4日が独立記念日の祝日となることから、7月3日に発表される。非農業部門雇用者数の増加数は市場予想では前月比11万3000人減となっている。仮にこのとおりならば過去4ヶ月で最少となるが、健全に推移中との判断になる。一方、失業率は4.3%に小幅上昇したと予想されている。
パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は関税による将来のインフレに警戒感を持っているが、労働市場に悪化の兆しが現れると利下げ圧力が強まりそうだ。利下げ観測の高まりはNY金の押し上げ要因となる。
その他、求人件数(JOLTS)やISM製造業、非製造業景況指数などにも注目したい。
関税措置の暫定期限到来
経済指標以外では何と言っても7月9日に関税措置の暫定期限が到来することがある。トランプ米大統領は協議がまとまらない場合に強硬的な対応に乗り出すのか否か。また7月4日を目途にして上院で審議が進んでいる大型減税法案の成立がどうなるか。予測不能のイベントゆえに結果次第ではNY金も上下に振れそうだ。ただし、水準を切り下げた後だけに、下値は限られると見る。基本的には3,300ドルを固める方向と見ている。
NY金については3,300ドルを挟み上下50ドル、JPX金は1万5400円を挟み上下300円のレンジを想定。